東洋紡は、大塚化学(大阪市中央区)と共同で、バイオ医薬品の精製プロセスにおける生産性向上に貢献するウイルス除去膜を新たに開発した。東洋紡独自の製膜技術と大塚化学のポリマー技術により、ウイルス除去膜の目詰まりを抑制することで、従来品に比べ単位時間当たりの医薬原液透過量を約2倍に増加することを可能にした。ウイルス除去工程での処理時間を従来の3分の1以下に短縮することができるため、生産性向上に貢献する。4月末より医薬品メーカーや研究機関に向けてサンプル提供を開始している。
生物由来の原料から製造されるバイオ医薬品は、国際基準に従って製造工程でのウイルス除去や不活化が義務付けられており、医薬原液からウイルスを除去するプロセスでウイルス除去膜と呼ばれる分離膜を利用するのが一般的となっている。今後、世界のバイオ医薬品市場は年率8.5%成長が見込まれており、生産効率の向上が求められている。
今回新たに開発された中空型ウイルス除去膜は、東洋紡の孔径制御技術を応用したもの。膜の内部に施される孔径を内側と外側で異なる独自の傾斜構造を実現した。有用成分を透過させる一方で夾雑物が膜内部で目詰まりするのを効果的に抑制し、安定したろ過を可能にする。また、大塚化学のポリマー技術を組み合わせた膜原料は、膜の表面におけるウイルスや夾雑タンパク質の堆積を抑えるのに有効。これらにより、単位時間あたりの医薬原液の透過量が従来品と比べて約2倍に増加し、ウイルス除去工程にかかる作業時間を3分の1以下に短縮することを可能にした。このウイルス除去膜は、処理圧力やウイルス濃度、pH値といった顧客の要求仕様に合わせて孔径や処理液量、耐久性などを調整することができるため、抗体医薬品や遺伝子治療薬などさまざまなバイオ医薬品の製造プロセスへの適用が可能という。